「今日は英単語を覚える日!」と決めて、1時間ひたすら単語帳をめくる。 「数学の二次関数をマスターするぞ!」と、似たような問題を連続して解き続ける。
私たちはつい、同じ種類の課題をまとめてこなす「一点集中(ブロック学習といいます)」こそが、最短の学習ルートだと思いがちです。しかし、最新の学習科学の視点は少し違います。
実は、脳にとっては「同じことを続けない」方が、記憶の定着率が良いことをご存じでしょうか? 今回は、あえて違う課題に交互に取り組むことで脳を刺激し続ける「インターリーブ学習(交互配置)」についてご紹介します。
「できたつもり」になるブロック学習の罠
なぜ、同じパターンの練習を続けると危険なのでしょうか?例えば、野球のバッティング練習で「カーブだけを20球連続で打つ」と想像してください。
最初の数球でタイミングを掴めば、あとは予測がつくので簡単に打てるようになります。
勉強も同じです。似たような問題を連続して解いていると、脳は「解き方」を推測する必要がなくなるため、省エネモードに入ります。その時はスラスラ解けるので「覚えた!」と錯覚しがちですが、実は**「脳がパターンに慣れただけ」**で、本番で使える知識として定着していないことが多いのです。
学習内容を「混ぜる」だけで点数が3倍に?数学の実験
これを証明する、アメリカで行われた数学の実験(The shuffling of mathematics problems improves learning" (2007) : Doug Rohrer, Kelli Taylor)があります。大学生のグループに、複雑な立体(くさび形や球体など)の体積を求める公式を教え、練習させました。
- グループA(ブロック学習):「くさび形」をまとめて解く→次に「球体」をまとめて解く…という順序で練習。
- グループB(インターリーブ学習):いろいろな形状の問題をランダムに混ぜて練習。
【練習中の正答率】
- ブロック学習:89%(スラスラ解ける)
- インターリーブ学習:60%(毎回考えないといけないので苦戦)
しかし、1週間後の【最終テストの正答率】は驚くべき結果でした。
- ブロック学習:20%
- インターリーブ学習:63%
ブロック学習をしたグループは、テストの時には解き方をほとんど忘れていました。一方、混ぜて練習したグループは、「この問題にはどの公式を使うべきか?」と毎回判断するトレーニングをしていたため、知識が深く定着し、本番でトリプルスコアの大差をつけたのです。
インターリーブ学習の「2つの鉄則」
では、この魔法のような学習法をどう取り入れればいいのでしょうか。闇雲に科目を混ぜればいいわけではありません。効果を最大化するための鉄則があります。
1.「関連性のあるもの」を混ぜる
これが最大のポイントです。「数学」の合間に「料理」を挟むような、全く違うジャンルでは効果が薄いと言われています。脳の使う場所が違いすぎるため、相乗効果が起きないからです。
「同じ教科の中で、違うアプローチが必要なもの」を混ぜるのが正解です。
- 英語なら:「単語暗記」→「長文読解」→「英作文」
- 数学なら:「計算問題」→「図形問題」→「証明問題」
このようにメニューを混ぜることで、「さっき覚えた単語が長文に出てきた」「計算力が図形に活きる」といったリンクが脳内で発生し、応用力が身につきます。
2. 30分単位で切り替える
ひとつのメニューをやりすぎないことも重要です。おすすめは30分程度。「もう少し続けたいな」と思うくらいで強制的に次のメニューへ移ることで、集中力のピークを何度も作り出し、脳を常にフレッシュな状態(適度な緊張状態)に保つことができます。
タイマーを使って、学習の時間を管理
この学習法を実践するには、時間の管理が不可欠です。30分ごとにアラームを鳴らし、強制的にメニューを切り替えるリズムを作りましょう。
学習タイマーやキッチンタイマーを活用して、学習時間を管理しましょう。
もし、iPhoneを使っているなら、私たちが作った学習アプリを試してみてください。広告なしで無料で使えます。
別の記事で紹介した、集中力を高める「ポモドーロ・テクニック」だけでなく、このインターリーブ学習にも最適です。
シンプルな操作でインターバルを設定でき、「集中と切り替え」のリズムをサポートします。
まとめ:脳に「楽」をさせない、ことで学習効果アップ!
同じ練習を繰り返すのは、脳にとって「楽」で気持ちが良いものです。でも、筋トレと同じで、少し負荷がかかる方が、実際の力はつきます。
「一つのことをやり遂げなきゃ」という真面目さを、少しだけ手放してみてください。あえて混ぜる。あえて切り替える。
その「脳への揺さぶり」が、あなたの学習を次のレベルへと引き上げてくれるはずです。




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