私たちが作る「書く、読む、考える」ための道具には、それにふさわしい「素材」を探しました。
「環境にもできるだけ優しく、そして、できれば国産の素材を使いたい」そこから素材探しはスタートしました。さらに、どこにでもあるような表情ではなく、少しだけ独特な色合いのレザーで製品を作りたいという思いで、私たちがたどり着いたのは、日本国内で育てられた牛から生まれた、日本国内でなめされた、正真正銘の「日本の革」でした。
環境に優しいレザーとは何か?
私たちがメインで使用している「日本製」のレザーは、原皮から日本の日本製のレザーです。最初から、この素材の採用が決まっていたわけではありませんでした。
素材選びは、使うなら「少しでも環境に優しい素材」という方針で始まりました。
当初は、動物由来でないヴィーガンレザー(りんごの搾りかすを原料とする「アップルレザー」が代表的)が「環境負荷が少ないのではないか」という思いから、素材の候補のひとつでした。
しかし、調べてゆくなかで、多くのヴィーガンレザーは耐久性を高めるために石油由来の原料(PUなど)を使用しており、必ずしも「土に還る素材」や「圧倒的に環境負荷が低い素材」とは言い切れない側面があることを知りました。
一方、本革は「食肉文化の副産物」です。 私たちが革を使わなければ、その皮はただ焼却処分され、温室効果ガスを生むだけの存在になってしまいます。「いただいた命を無駄にせず、長く愛用できる道具へとアップサイクルする」 その循環こそが、現時点で私たちが考える、最も理にかなった「環境への責任」であるという結論に至りました。
このような流れから本革を採用するという結論に至ります。
「原皮」から日本の、純国産
「日本製レザー」と呼ばれるものでも、実はその原料となる「原皮(なめす前の皮)」の多くは、海外からの輸入に頼っていることをご存知でしょうか? 品質や供給を安定させるため、原皮の輸入は業界のスタンダードです。 実際、国産の原皮(日本の牛)が使われる割合は、国内市場のわずか1割程度と言われています。
なぜ、国産原皮はあまり使われないのか? 私たちは当初「価格が高いからだろう」と考えていましたが、実際は「供給量の少なさ」や「素材としての品質のばらつき」「サイズの不揃い」といった、作り手側の事情が大きいことが分かりました。
しかし、国産原皮を得意とするタンナー「セナレザー」との出会いにより、Crane & Bloomの商品開発は前に進みます。
原皮輸入に伴う輸送エネルギーを削減することは、フード・マイレージ(食料輸送距離)の観点からも環境負荷の軽減に繋がります。
遠くの資源より、近くの恵みを大切にしたい。 そんな想いで、私たちは希少な「純国産」を選ぶこととなりました。
姫路のタンナー、セナレザーとの協業
兵庫県姫路市。平安の昔から「革の聖地」として知られ、国内の皮革製品の約7割を生み出すこの地に、私たちのパートナーである「セナレザー」の工場はあります。
国産の原皮を積極的に使い、職人による高い仕上げ加工に定評のあるセナレザー。色合いや表面の表情など、理想的なレザーになるまで根気よく対応していただき、Crane & Bloom専用のレザーを作成していただきました。
レザーは人が触れ、使うための道具です。だからこそ、見た目の美しさだけでなく、手に取った時の感触や使いやすさ、そして日常使いでは簡単にへこたれない強さを実現しています。
「注文が来たらすぐ制作に取り掛かれる準備を常に整えている」 そう語る彼らの柔軟性と技術力が、Crane & Bloomの理想を形にしてくれています。


「道具」としての機能性と、美しさを両立したレザー
私たちが選んだのは、毎日気兼ねなく使える「道具としての強さ」でした。 ベースとなっているのは、耐久性と耐水性に優れたクロムなめしの技術です。 熱や湿気に強く、変色やシミのリスクも少ない。現代の生活において、メンテナンスに気を使わずガシガシ使えることは、文具にとって重要な「機能」の一つです。
しかし、機能的なだけではCrane & Bloomの革とは言えません。 そこで採用したのが、たっぷりとオイルを含ませた「プルアップレザー」です。
革を曲げたり、指で押したりすると、内部のオイルが繊維の中を移動し、そこだけ色が淡く変化する。 まるで呼吸をしているようなこの豊かなグラデーションこそが、プルアップレザーの醍醐味です。 頑丈でありながら、決して無機質ではない。 使うたびに表情を変えるこの革は、あなたの思考の時間を支える、頼もしくも美しい相棒となるはずです。

命を無駄にしない、という選択
革は、食肉文化の副産物です。私たちが革を使わなければ、その皮はただ焼却処分され、温室効果ガスを生むだけの存在になってしまいます。
命の副産物を、長く愛用できる道具へとアップサイクルすること。日本で消費された食肉の副産物を積極的に利用することで、国内の環境負荷の低減に少しでも貢献できればと考えています。
世界にひとつだけの、表情を楽しむ
私たちが扱う革は、自然の生命から生まれた「天然素材」です。 一つとして同じものはありません。
原皮に残るわずかなシワや血管の痕、色の濃淡。 それらはすべて、その牛が生きてきた証であり、天然皮革であることの証明です。 さらに、その革を職人が一枚一枚染め上げ、仕上げを施しています。気温や湿度の変化と対話しながら作られるため、仕上がりには必ず微細な個体差が生まれます。
お手元に届くのは、世界にたったひとつの「あなただけの個体」です。 ウェブサイトの写真とは、少し表情が違うかもしれません。 ぜひ、その一期一会の出会いを楽しんでいただければ幸いです。






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